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作品紹介

14世紀〜16世紀
(後期ゴシック美術、ルネサンス美術、マニエリスム美術)

写真:ヤン・ブリューゲル(父) アブラハムとイサクのいる森林風景)

  • ヤン・ブリューゲル(父)
  • 1568年 - 1625年
  • アブラハムとイサクのいる森林風景
  • 1599年
  • 油彩/板 49.5 x 64.7 cm
  • 左下に署名と年記: I, BRVGHEL 1599
  • P.2002-0001
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本作品は、ヤンがイタリア旅行から帰り、故国で画家としての活動を始めた初期の森林風景である。添景風に描かれているのは、モリアの地を目指して進む、ロバに乗ったアブラハムとイサク。アブラハムはモリアで、ひとり息子イサクを犠牲として神に捧げようとするが、イサクを屠ろうとする瞬問、天使が現れてアブラハムを制止することとなる。イサクは自分を燔祭の犠牲とするための薪を抱えている。2人の周囲に描かれた5人の人物は、樵たちである。周囲の風景は、明度の異なる緑の階調によって描き分けられた近景の暗い森と小川を挟んだ明るい中景、樹間から望まれる遠景と3つに分割されている。緻密で現実的に表わされたその森林風景景は、青く霞むような非現実的な遠景描写とは対照的に、フランドル絵画の伝統的な世界風景よりも、より写実的な17世紀のオランダ風景画を思わせる。広大な広がりを示す風景の中に、添景人物によって聖書に由来する主題を描くことは16世紀フランドル風景画の特徴となっており、その風景は単なる物語のための舞台として描かれるのではなく、それ自体象徴的な意味を帯びていた。「アブラハムとイサク」の主題は、中世以来、キリスト磔刑を予告するものとして理解されていたが、本作品の森林風景にも、主題に関わる何らかの象徴的意味を探ることは可能であろう。しかし一方で、本作品の森林モティーフはヤンが1607年に描いた《エジプト逃避途上の休息》(エルミタージュ美術館)にも用いられており、森林がそれ自体日常の場とは切り離された神聖な舞台を意味するものであったにせよ、個別的な主題と風景モティーフの繋がりは、ヤンにあっては前代よりも希薄なものとなっていたことが窺われる。16世紀から17世紀にかけてネーデルラント絵画の重要な絵画ジャンルとなった森林風景の特質を、よく示す優品である。

(出典: 国立西洋美術館名作選. 東京, 国立西洋美術館, 2006. cat. no. 38)

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