このページは美術館の魅力を「もっと知りたい!」という皆様のご要望をかなえるため開設しました。
ここでは国立西洋美術館を西美(セイビ)と呼ぶことにします。
50周年サイト「掲載情報」ページへ戻る
 
 館長ってどんなことをしているの?

今回は、皆さんから寄せられた「美術館の館長ってどんなお仕事をしているの?」という質問に答えるべく、青柳正規館長にインタビューしてまいりました。

館長室に入ると、まず目に飛び込んできたのはたくさんの「本」!まるで小さな図書室の様に、たくさんの書籍が壁一面を占めています。それからたくさんの「書類」!これらの書類の処理はさぞかし大変だろうなと思いました。

私たちは、館長室には立派な椅子があって、館長はそこに座って書類を読んだりしているイメージがあるのですが、実際はどのような仕事をされているのですか?
椅子はあるんですけどね、実際はあまり座っている時間がないんですよ(笑)
例えばですが、 日本各地の館長が集まる会議に出席し、様々な館の企画や展覧会情報の収集をしたり、美術館に関わる会合などで、これからの美術館についてや今後の見通しについて意見交換をしたりします。
また、国内はもちろんヨーロッパをはじめ海外の国や地域へ、美術作品の貸し借りの交渉に出かけます。どの作品を借りるのかはもちろんのこと、梱包方法から搬出方法に至るまで、しっかり決めてきます。
西美の作品が他の美術館(展覧会)へ貸し出される時は、搬送方法や保護方法の計画と交渉などの打ち合わせをします。大事な作品なのでお互いきめ細かく打ち合わせするんですよ。

美術館の外での仕事が多いのですね。
もちろん、館の中での会議に出たり、館内や前庭へ出てお客様がどのように作品をご覧になっているのか反応を見てまわったりもしています。

本当にお忙しいですね。
少しでも時間が空いたときには読書をして気分をリフレッシュさせることもありますよ。

館長の仕事として大切なことは何だと思いますか?
美術や文化というものは、元々お金儲けのためにあるのではなく、「人が幸せを実感できるもの」としてあるのだと思うのです。美術館も同様に儲けを生み出す場ではなく、皆がお金を出し合って楽しむ場としてあるべきだと考えています。
しかし今、日本中の美術館は経済的に厳しい状態にあります。
一つの展覧会を成し遂げるにも多くの費用がかかりますし、貴重な作品や美術館自体の維持にも経費はかかります。しかし、年々予算は減っているため、研究費や事業運営に必要な経費も減らさなければならないのが実状です。
美術館独自でも工夫はしていますが、やはり文化にはサポートが必要なんだということを周りに理解していただかなければいけません。
ですから、私は外へ出向いてお客様や研究者の声、そして美術館で働く職員の声を届けることが館長として大切な仕事だと思っています。

経済的に厳しいからこそ、たくさんのお客様に来ていただきたいですね。そのために工夫していることはありますか?
まずは、展覧会の内容をよいものにするということが第一です。
料金の面ではまだまだ高いという意見もありますが、常設展では18才未満を無料にしました。これは、感受性の強い時期だからこそ多くの若い人に来ていただき、作品と出会って欲しいと考えているからです。

それから、教育普及プログラムや今開催しているクリスマスイベントなどの事業を行うことで、美術館は敷居が高いと感じている方々にもご来館いただけるように工夫を凝らしています。その効果が一番現れたのは常設展を無料開放してさまざまなプログラムを行ったFUNDAYです。このイベントによって小さなお子様を連れた親御さんも気軽に入ることができたと好評をいただきました。

しかし、美術館の収容人数も限られていますし、あまり混雑すると逆に作品が見えにくいといった意見もあります。確かに美術館では静寂の中で作品とじっくり対話してほしいという願いもあります。ですから、入場方法も工夫したり、また椅子など館の備品にもこだわって気持ちよく利用していただけるよう考えています。

(美術館に対する思いがたくさんあるのですね。この続きは、今後の「もっと知りたい!国立西洋美術館」でご紹介します。乞うご期待!) 

それでは、最後に西美の作品の中でお好きなものを1点だけ選ぶとしたらどの作品でしょう?
ジョン・エヴァリット・ミレイの「あひるの子」です。
まず、なんといってもかわいい。童話の「醜いアヒルの子」ってありますよね。ひょっとしたらミレイは自分自身を「醜いアヒルの子」と重ねて、あの少女に投影して描いたのかもしれないなと思ってみています。
※《あひるの子》は、現在展示されておりません。

ジョン・エヴァリット・ミレイ
《あひるの子》 1889年
油彩/カンヴァス 121.7 x 76 cm

青柳館長は、とても、ものごしの優しい気さくな方でした。
愛犬のワンちゃんのお話になると目を細められて嬉しそうにお話してくださいました。ワンちゃんの朝の散歩は日課だそうです。

青柳館長は学者としての顔も持っているので、日々執筆活動もされているそうです。

本当にお忙しいですね。
これからも応援しています!


デスクには館長の愛犬君のお写真が
取材:美術館.com 米山公紀 水井美佳 
 

ツリー・デコレーションのその後・・・

前号で記載した「ツリー・デコレーション」のミニツリー。

この日も、夕日にたくさんのシルバーボールがキラキラと輝いて素敵な状態になっていました。

「ツリー・デコレーション」のイベントに、最初は参加を迷う方もいらっしゃったようですが、徐々に皆さん楽しんでシルバーのボールに絵やメッセージをかいて飾り付けてくださるようになったとか。

たくさん色を使った素敵なデザインのボールや、まるで絵馬のようにお子様の健康と成長を願うメッセージや受験合格祈願が書いてあるボールなど、様々なメッセージを託されて、ツリーは午後4時半から点灯され輝きを放ちます。(^-^)(ツリーの設置は27日まで。ガーデン・イルミネーションは1月4日までです。)

入館時間を考えて、入るときは点灯前、お帰りになるときは4時半過ぎにしてみると、両方の姿が見られてちょっぴりお得な気分になれるかも?!

ちなみにこのツリー・デコレーションの案は、青柳館長だそうです♪


ミニツリーにも沢山の飾りが付けられて
華やかな雰囲気になりました!
   
 

ポール・シニャック
《サン=トロペの港》

1901年頃 油彩・カンヴァス
131cm×161.5cm
点描の画家として有名なポール・シニャックですが、この絵を見ると以前の時期の作品よりもさらに点が大きくなっているような気がします。作風が変わろうとしていたときのものなのだそうです。絵の中の明るい部分と暗い部分との差が奥行きを出していて私の大好きな作品です。
点描画の面白さは、絵に近づいて見た時と、離れて見たときの印象がちがうこと。パレットの上で絵具を混ぜず、絵具を隣り合わせにカンヴァスに置く方法で、視覚混合を利用した絵画を完成させています。視覚混合を利用するといっても、描くときはよくよく計算しながらの配色になるわけですから、相当な根気が必要ですよね。
さて、シニャックは、同じく点描の画家として知られている大の親友であったスーラの死に大きな衝撃を受け、友人の勧めでヨットによる地中海巡航の旅に出た時に、このサン=トロペの港を見つけたのだそうです。そういった意味でも、この港はシニャックにとって大切な場所なのでしょう。1892年以降、パリとサン=トロペを往復していた10年ほどのあいだに描かれた作品の一つで、この時期のものとしてはもっともモニュメンタルな作品なのです。
 
     
 
◆「西美」(セイビ)のひみつ(8)◆
このコーナーでは、「西美」の、
知っているようで知らなかったこんなコトをお知らせします!
「お掃除はどうする?作品点検の必須道具って何?」

第6号では前庭彫刻のお手入れ方法をお伝えしましたが、常設展示室の中での絵画や彫刻のお掃除は一体どうしているのでしょうか?
今回は通称「埃払い」の仕事を取材してまいりました。
「埃払い」とは彫刻や絵画の額に溜まった埃を払ってお掃除する作業。さらに額縁や絵画に異常がないか点検する大事な作業なのだそうです。
それでは早速その様子を見てみましょう!


まずはお掃除に使う道具を見せていただきました。
使用するのは大、中、小の刷毛です。

大きな刷毛は額縁の上の部分に溜まった埃や
広い部分に使います。

中くらいの刷毛は額縁の彫りの複雑な部分に使用。

小さい刷毛は絵と接する縁の部分に溜まった
埃や装飾の繊細な部分の埃を払うのに使います。

「埃払い」は月に1回行っているそうです。夏場よりも冬場の方がお客様の着ている洋服がウールなどに変わるのでその分、埃も多く溜まるのだそうです。
それにしても大小たくさんの作品を一点一点点検しつつ作業していくのは大変!でもスタッフの方は手馴れたもので、ササッとしかも丁寧に仕上げていきます。

さて、ここで前回ご登場いただいた常設展示責任者の高梨さん(以下T)に、お話を伺いました。

絵画の額縁には、刷毛を使っているようですが、彫刻にはどんな道具を使うのですか?
T:彫刻には羽根ばたきを使います。皆さんがよく車の掃除なんかに使っているはたきです。

絵画自体にはどんなお手入れをするのですか?
T:額と違って絵画には埃がつきにくいので、特別お手入れはしませんが、たまに大きな埃がついたりするので、その時はやわらかい刷毛でそっと取り除きます。

点検作業もしながらということですが、万が一異常が見つかったらどうするのですか?
T:額縁にひびが見つかったときは応急処置としてニカワで固定します。処置の様子は全て写真に撮って記録するんですよ。作品1点1点のカルテのような書類も手作りして、全作品を管理しています。
「埃払い」の点検は月に1回ですが、異常が見つかればすぐに連絡が入ります。だから、いつでも詳細な点検が出来るようにこんな道具を持ち歩いているんですよ。

1.骨(牛の骨)べら←高梨さんの手作り!
  素描等紙物をめくるための道具です。
2.白手袋
  手の油や指紋をつけない為の必需品。
3.ライト
  作品の点検に使用。 ライトが球体なので まんべんなく光が あたる様になっている優れもの。
4.メジャー(大)
  大きな作品や壁に取り付ける キャプションの位置を測るのに使います。
5.金属製直角定規
  絵が壁からどれくらい浮いて いるかや、彫刻なら台座が曲がっていないかを 調べます。
6.繰り出し式の鉛筆
  太目の芯で記録の他に スケッチを描く時などに使用。
7.メジャー(小)
  小さい作品を測る時などに使用。
8.ルーペ
  細かいところまでよーく見えます。
9.真鍮製のノギス(ドイツ製)
  真鍮は温度の影響を受けにくい。1/10mmまで測れます。

なんだか子どもの頃に憧れた探偵の七つ道具のようですね。(^-^) 
なかなか見せていただく機会がないので今回は、特別に公開していただき有難うございました!

 

◆お客様からの声◆

・tasurioさん:ツリーの飾り付けも1本だと楽しい作業ですが、沢山の木となると根気がいるのでしょうね。飾りに自分で絵を描いて飾るイベントの「ツリーデコレーション」っていいですね。近くでやっていたら参加してみたいなと思いました。美術館の絵の置き方にこんなに神経を使われているなんて…次回からは絵の飾り方も見ながら鑑賞したいと思います。

・A.Sさん:新館のリニューアル情報をとても興味深く拝読しました。「オールドマスターならではの展示」が今から楽しみです。首を長くして来年のリニューアル完成の日を待ちたいと、改めて思いました。

・f.s.さん:顔の向きまで考慮して展示しているとは知りませんでした。いろいろな配慮がなされているのですね。大作になると相当の重量と思いますが大勢でヨッコイショと掛けるのでしょうか?「観覧者の方」ではなく「お客様」と呼ばれてちょっと嬉しくもありました。館の姿勢を感じました。マナーを弁えた良いお客でありたいです。

・サンター2さん:2009年度の企画展内容をお知らせ下さい。
2009年度最初の企画展は2月28日から開催されます「ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画」です。ルーヴル美術館所蔵の17世紀ヨーロッパ絵画を「黄金の世紀とその陰」、「大航海と科学革命」、「聖人の世紀における古代文明の遺産」という3つの大きなテーマで分類し、横断的に検証します。フェルメールの「レースを編む女」をはじめ、日本初公開作品約60点を含む71点の作品を展示します。
その他の展覧会については今後西美のHPに掲載されますのでご確認ください。
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/upcoming.html

 
ページの先頭へ戻る
 
このサイトに掲載している記事・写真・イラスト等のすべての コンテンツの無断複写 ・転載・転用を禁じます。
Copyright ©独立行政法人国立美術館国立西洋美術館