このページは美術館の魅力を「もっと知りたい!」という皆様のご要望をかなえるため開設しました。
ここでは国立西洋美術館を西美(セイビ)と呼ぶことにします。
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     50周年!館長からのメッセージ

西美は今年50周年を迎えます。そこで、青柳館長に、50周年への思いと、西美のこれからについてお話を伺いました。(以下青柳館長:

これまでの西美についてや館長のお考えをお聞かせいただけますか?
:50年前、この西美の設立には、色々な試練がありました。戦後間もない時期でもあり、その混乱のなかで国立の美術館を設立するというのは、並々ならない努力が必要でした。
まずは、資金面での苦労。国家からの予算の少ない状態で、これだけの美術館を建てるなど、到底不可能に近いものがありました。その時、各界の人々が美術館設立のために動いてくださいました。当時の金額で1億円を寄付金で集めるというものでした。

何故、昔の人々は、美術館設立のために力を貸してくださったのでしょうか。
それは、現在の社会で忘れられがちな「志」や「見識」というものをお持ちだったからに違いないと思います。
国民のために、文化のために、美術界だけでなく、経済界の人々が力を結集しました。

「美術や文化というものは、無くても済んでしまうもの」という風潮が現代には見られます。しかし、昔の人々は「美術や文化」というものの持つ人々への影響力をきちんと見極めていたのでしょう。

美術館や博物館という施設をどのように定着していけるかは、「構想力」というものを必要とします。
今はその「構想力」というものが乏しくなっているのではと思います。それはとても残念なことです。
何時の世も、この「構想力」というものが、あらゆるものを支えています。私たちはそれを忘れることなく、持ち続け、継承していくことが大切なのではないでしょうか。

では次に、これからの西美について工夫するべき点などお考えがありましたらお聞かせ下さい。
:まずは美術館に足を運んでもらうことが大切です。そのためには、お客様がいらっしゃるのをただ待つだけでなく、美術館サイドも様々な工夫やアイデアを出し合ってお客様の来てくださりやすい環境を整えていくことが求められることでしょう。

今後、西美では、その環境の一つとして「TOUCH THE MUSEUM」という試みを開始します。まだ試験段階なのですが、常設展の作品の解説をもっと知りたいという、お客様からのご希望や、またお子様と一緒に作品を楽しみたいが、自分ではお子様に上手く解説できないというお悩みを持つ親御さんの力強いパートナーとして、このシステムの開発を進めてきました。

皆さんご存知かと思いますが、これはiPod touchという機械を使用するもので、作品の解説や作品の背景、関連事項などが収められています。お客様は、該当の作品の前でこのiPod touchの画面に触れていただくことで、解説を聞いたり、参考画像を画面で見ることが出来ます。
現在テスト段階で、解説のボリュームや、操作のしやすさなどをお客さまに実際に使っていただき、実験結果を収集しているところです。


オプションとして本館の中のコルビュジエ建築についてもポイントを見ることが出来るようになっています。
(赤い丸をタッチするとその部分の解説を見ることが出来ます。)
本体は軽く薄く、手のひらサイズで持ちやすく、画面にタッチする感覚は最初ちょっと戸惑いましたが慣れてしまえばOK!どんどん活用したくなってきますよ♪
展覧室にいる滞在時間がこれまでよりも長くなることうけあいです。(笑)それくらい内容が充実しています。

お客様が期待している企画展のほうでは、どのような構想をお持ちですか?また新しくなる常設展示の構想も宜しければお聞かせください。
:有名な画家や流派の展覧会というのは、何処の美術館でも開催されるものです。今後の西美では、余り知られていない優れた作家や、流派をみなさんに紹介できる展覧会を開催していきたいと思っています。
また、常設展のほうでは、古代のものなど、西洋の古い時代の作品も収蔵し、所蔵作品の充実を図っていきたいと思っています。そうすることで西洋美術の大きな流れを辿るようなそんな展示が出来ればいいと考えています。

このほか、西美への館長としての想いなどありましたらお聞かせ下さい。
:私たちは、今までよりもさらに子どもたちへの啓蒙活動が大切になってくると思っています。美術や文化というものは、長いスタンスが必要なものだと思います。子どもたちが、幼い頃から美術や文化に触れる機会をわたしたち大人が持たせてあげる必要が有ると思います。
その時には、全ての作品を好きになる必要は無いんです。たった1点だけでもお気に入りになる作品があれば、大人になった時にふとしたきっかけで、その作品のことを思い出してくれるかもしれません。そしてふらっと美術館へ足を運んでくれたら、こんなに嬉しいことは無いんです。また、美術や文化に少しでも興味を持ってくれるようになるかもしれません。
その役割を担うのが私たち美術館のスタッフであると思うのです。そのお手伝いをすることこそが、私たち大人の使命なのではないでしょうか。
この西美はそのお手伝いをすべく、全てのスタッフが日々努力しています。国内唯一の国立で「西洋」に特化した美術館という特徴を上手く活かしながら、子どもたち、そして美術を愛する人々に少しでも親しみを感じてもらえる美術館を目指したいと思っています。いうなれば文化的懐の深さ、「志」を50周年に向けて発揮していきたいですね。
お客様にももっと足を運んでもらえるようなキャンペーンもやってみたいと思っています。

青柳館長はじめ、スタッフの皆さんが、今後の西美について本当に色々と考えてくださっていることが、お話を聞いていて伝わってきました。
ますます楽しみが増えそうな西美。これからも要チェックですね!!(^-^)

取材:美術館.com水井美佳 
 
 
   
 

ギュスターヴ・モロー
《ピエタ》

1876年頃 油彩・板
23cm×16cm
松方コレクション

ギュスターヴ・モローって何て不思議で神秘的な絵を描くのでしょう。私の好きな画家の一人でもあります。
さて、「ピエタ」とは、聖母マリアが十字架より降ろされたキリストの亡骸を抱えてその死を嘆く主題のことです。

この作品では、十字架から降ろされてもなお光り輝いているキリストの頭部に神秘的な印象が残ります。寄り添う母マリアの上には光りながら羽ばたく鳩がいます。この鳩は聖霊を象徴しているのだそうです。この絵の前に立つと幻想的な魅力に時間を忘れてしまいます。そして私自身が母であるためでしょうか。聖母マリアの静かな哀しみの姿に強く胸を打たれるのです。

またギュスターヴ・モローは、自分の作品にあわせた額をデザインすることでも知られています。この作品の額縁は残念ながら彼自身のデザインによるものなのかは不明です。
モローには、その作品のコレクターも多く、多く売れたため、1880年代以降はサロンに出品せずとも暮らしていけたといわれています。
また、その頃からしだいに自分の作品を集めた美術館を構想し、その死後、1902年、弟子の一人のルオーを館長として現在のモロー美術館が設立されることになったのです。

 
     
 
◆「西美」(セイビ)のひみつ(10)◆
このコーナーでは、「西美」の、
知っているようで知らなかったこんなコトをお知らせします!
「美術館の教育普及ってどんなことをするの?」

第1号から教育普及のプログラムを何度か紹介していますが、そもそも、教育普及というのはどういった役割を担っているのでしょうか。学芸課 教育普及室研究員の横山さんにお話を伺いました。(以下Y)

教育普及の仕事で重要なことは、どんなことだとお考えですか?
Y: なによりも作品や美術館を楽しんでもらうことです。国立美術館である西美は誰もが来られる開かれた美術館でありたいと願っています。子どもたちや、ふだんあまり美術館に来ることのない人たちから、美術の専門的なことに関心のある方まで、美術を楽しんでもらいたいと考えています。

美術館の顔の一つに、「教育機関」であることが挙げられると思いますが、教育普及の活動はどのような役割を担っているのでしょうか?
Y:教育と言っても学校で机を並べてするような勉強とはもちろん違います。ここに来て何かをしたことがテストの点数で評価されるとか、あるいは当館の作品を観たからそれが次の図画工作に活かされるとかといった、すぐに目に見えるような結果を私たちは期待しているわけではありません。むしろ、ここに来て作品を観たことがその人の人生で、いつか何かに結びつけば良いなと考えています。ある人にとっては、それはすぐに重要な経験になるかもしれませんし、ある人にとっては10年後、20年後にそうなるかもしれません。また別の人にとっては、ただ過ぎ去っていく経験かもしれません。私たちの活動は美術を楽しむこと、美術館に来てみることのきっかけを作ることだと思っています。

具体的にはどのような活動をしていますか?
Y:学校団体を対象とするスクール・ギャラリー・トーク、家族で参加できるどようびじゅつ(ファミリー・プログラム)やクリスマス・プログラム、これまで西美に来ることのなかった人たちをも対象としたファンデーなど、対象を変えてさまざまなプログラムを行っています。

また、右の画像はアート・カード・セットというもので、西美、東京国立近代美術館、東京国立近代美術館工芸館、京都国立近代美術館、国立国際美術館、国立新美術館が協力し制作したものです。各館の所蔵作品13点(国立新美術館は除く)をはがき大のカードにしてあります。遊び方は自由ですが、ヒントになるブックレットも入っていて、学校へ無料で貸し出ししています。このカードを使って遊んだり学んだりしながら作品に親しんだり、さらには西美に来てもらえたりしたら嬉しいです。

教育普及のプログラムには、ボランティアスタッフが活躍されていますね。
Y:当館の教育普及プログラムは、スクール・ギャラリー・トークをはじめ、ボランティアスタッフとの協力によって成り立っています。来年度からは新たなスタッフも加わり、さらにプログラムを充実させていく予定です。ボランティアスタッフのひとりひとりの経験や得意分野がプログラムに活かされると良いなと思います。ボランティアスタッフが増えることで、好評をいただいた「建築ツアー」なども、実施していきたいと考えています。ご期待ください!

今後のプログラムの充実は、来館者にとっても嬉しいことですね!今後より一層西美が身近に感じられる機会が増えそうです。是非期待いたしましょう!(^-^)

 

◆お客様からの声◆

・けんさん:上野で「世界遺産登録」ののぼりは見かけていたのですが、それがル・コルビュジエ設計建物の一つとしての登録を目指すものだとは知りませんでした。ついでに、恥ずかしながら、ル・コルビュジエがペンネームだというのも初めて知りました。

・M.Hさん:展覧会を見ていると、よく「個人所蔵」と書いてありましたが、「へぇー」個人の方も貸して下さるんだー。と、簡単な感想しかもっておりませんでしたが、貸していただくまでには、やはり大変な努力や作業があるのですね。今後は貴重な美術品はさらにありがたく拝見させていただきます!

・T.Iさん: 展示品の搬送は特別な業者(たとえばそれなりの資格を持つ業者)に依頼するのでしょうか。
美術品を専門とする業者に依頼をします。

 
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