舟遊び
- クロード・モネ
- 1840年 - 1926年
- 舟遊び
- 1887年
油彩/カンヴァス 145.5 x 133.5 cm
左下に署名、年記: Claude Monet 1887
P.1959-0148
1883年、モネは妻カミーユ亡きあと、1892年には正式に結婚することとなるアリス・オシュデとその子供たちを連れてウール県ジヴェルニーに移り住む。屋敷からほど近い、セーヌ河に注ぐ支流エプト川に小舟を浮かべて遊ぶ一家の姿を幾度となく描いたのは、この地に定住して間もなくのことであった。本作品は、それら一連の「舟遊び」の主題を描いた作品の中でも、特に完成度の高い作例である。モネの扱った主題の中に、初期の《庭の女たち》(1867年、オルセー美術館)に代表されるような、戸外の光の光の中にたたずむ婦人像があるのは見逃せない。モネを、風景のみを愛した画家とは単純にいい切れないことを示すこのような作例は、1860年代、70年代に多く、画家が次第に光と色彩の効果に専心するにつれて姿を消して行くが、1880年代にも、本作品を初めとして時折姿を現している。画面を覆う青とばら色、緑とヴァーミリオンの鮮やかな対比の中に夢のような優雅な姿で描かれているのは、印象派の有力な援助者であった前夫のエルネスト・オシュデとアリスとの間に生まれた四人の娘たちの内の二人、シュザンヌとブランシュである。大胆に小舟を半分に断ち切った構図は、西洋絵画としては異例であるが、これはモネが写真術や日本の浮世絵版画から学びとったものであろう。しかし、モネは、水面を大きくとり、そこに映った影の表現に鋭い関心を払っているのである。
(出典: 国立西洋美術館名作選. 東京, 国立西洋美術館, 2006. cat. no. 73)