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心を病む女

シャイム・スーティン
1893年-1943年
心を病む女
1920年
油彩/カンヴァス 96 x 60 cm
右下に署名: Soutine
P.1960-0001

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スーティンの人物画は、他の主題を描いたものと同様、極端なデフォルメと激しい筆触と強烈な色彩対比が特徴だが、それにも拘わらず、人物たちの個性や特徴は、極めて鋭く表現されている。気の弱そうな若者、陽焼けして赤い顔の農夫、物怖じしない上流の女性、おずおずとした召使い等々。
この《狂女》もまた、大きく見開いて据わった目、引きつった顔面、緊張のゆるまない肩先や両腕、振り乱した髪などが、異様な緊迫感を画面にみなぎらせている。その印象は、さらに赤い服と荒々しい筆遣いによって引き立てられる。同じくユダヤ人村に育ったシャガールが民族と故郷への郷愁を描き続けたのに対し、スーティンは幼い頃の貧困と抑圧が強迫観念になったためか、あたかもこの世の醜さを暴き出すかのような激烈な表現に終始している。彼の人物画は、「自らの状況という地獄におかれた人間」を描いたフランシス・ベーコンの肖像画に先鞭をつけたものであり、またデフォルメによって遂にはマティエールそのものになってしまう対象処理は、アンフォルメルの画家ジャン・フォートリエの前例となっている。

(出典: 国立西洋美術館名作選. 東京, 国立西洋美術館, 2006. cat. no. 114)

写真:シャイム・スーティン 心を病む女