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幼い貴族の肖像

ニコラ・ド・ラルジリエール
1656年 - 1746年
幼い貴族の肖像
1714年頃
油彩/カンヴァス 65.3 x 53.2 cm
P.1972-0002

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本作品は、ラルジリエールの円熟期の作品と考えられる。左足を前に、右足を後方にひき、上半身をこれとは逆方向によじるようにして岩の上に坐るモデルのポーズには、バロック美術の伝統が窺われ、また、モデルを自然の中におき、そのまわりに花や動物を配するという方法も、当時の貴族的な肖像画芸術の流行であるが、色白のモデルの赤い唇やバラ色に輝く頬、肩からはおった衣などに新しい時代の到来を告げるロココ的な優美な色彩感覚を窺うことができる。画面左には羽を広げたごしきひわが描かれており、これらが何らかの意味を持っていたことは、右側の犬と幼い貴族の視線がこの小鳥に向けられていることからも推測される。ごしきひわは、キリスト教芸術において、キリストの受難と死、また、その復活を象徴するものであるが、もし、ここに描かれている幼い貴族が、伝統的に言われてきたように幼年時のルイ15世(1710-74)であるならば、その点からこの作品の隠された主題を明らかにすることができよう。すなわち、1712年に、彼の両親は相次いで病死しているが、その悲劇的事実を踏まえると同時に、幼児ルイ15世とブルボン王朝の繁栄を祈念するためにこの作品が制作されたという推定が成立しうるからである。もし、この仮説が正しいものならば、本作品の制作年代は1714年頃と考えられる。なお本作品には寸法を縦横およそ2倍にした異作がある(ポール・ゲッティ美術館)。

(出典: 国立西洋美術館名作選. 東京, 国立西洋美術館, 2006. cat. no. 50)

写真:ニコラ・ド・ラルジリエール 幼い貴族の肖像