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美しい尾の牝牛

ジャン・デュビュッフェ
1901年-1985年
美しい尾の牝牛
1954年
油彩/カンヴァス 97 x 130 cm
右上に署名、年記: J. Dubuffet / 54
P.1979-0003

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当館にはデュビュッフェの秀作が2点あるが、いずれも個人所蔵家寄贈のものである(1950年作の《ご婦人のからだ(ぼさぼさ髪)》は山村徳太郎氏寄贈)。第二次大戦後のヨーロッパ界における重要な傾向の一つにアンフォルメルがあるが、これは戦前の幾何学的抽象に対する反動あるいは修正と見做すことができよう。この傾向の画家たちは、幾何学的抽象のアカデミスム化、形式化を批判し、抽象の中に象徴的要素や情緒的多様性を取り込むことによって、戦前の抽象芸術とシュルレアリスムの対立を超克しようとしたのである。幾何学的抽象が古典主義的であったのに対し、アンフォルメルはロマン主義的抽象といえる。このアンフォルメルの運動に先鞭をつけたのが、ジャン・フォートリエ、デュビュッフェ、ヴォルスらであった。アンフォルメルは絵画の内包する多くの問題に取り組んだが、その最も重要な試みの一つは新たな絵画的マティエールの開拓であり、デュビュッフェはこの領域に大きな役割を果たした。《美しい尾の牝牛》は、絵具そのものの生み出すマティエールの可能性を極限まで引き出したものだが、彼はさらに絵具に土を混ぜることによって絵画と自然との断層を埋めようとし、さらには木の葉や蝶の羽根を画面に貼りつめて、自然を一層象徴的に表わしている。後者は一種のコラージュだが、デュビュッフェ自身はこれをアッサンブラージュと呼んだ。

(出典: 国立西洋美術館名作選. 東京, 国立西洋美術館, 2006. cat. no. 123)

写真:ジャン・デュビュッフェ 美しい尾の牝牛