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イル=ド=フランス

アリスティード・マイヨール
1861年-1944年
イル=ド=フランス
1925年
ブロンズ 167 x 47 x 49 cm
台座上面右に署名(モノグラム)、書込み: AM / epreuve de l'artiste; 台座背面に鋳造銘: Alexis Rudier. / Fondeur. Paris
S.1963-0002

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マイヨールにとって、自然はあらゆる行動と思索の源であった。自然こそ彼の唯一の信仰の対象であった。そして女性の肉体は、大自然の秩序と調和、平和と美を集約する小宇宙であった。《地中海》、《山》、《河》、《春》、《夏》、《夜》、《大気》、彼の数多くの女性像は自然のさまざまな現象を示す名称を与えられている。イル=ド=フランスは、セーヌ、マルヌ、オワーズの三河に囲まれたパリを中心とする肥沃の大地である。マイヨールは生地バニュルスにおとらずイル=ド=フランスの豊かな自然を愛し、生涯の殆どをこの二つの地方で過ごしている。1910年、彼は「水の中を歩く少女」のモティーフを構想し、1921年までに3体のトルソの習作を制作した。このトルソから《イル=ド=フランス》が生まれた。胸をはり、左脚を軽く後ろに引いて右脚でまっすぐに立つ若さあふれるこの女性像は、もはや歩いているのではなく、大地から生まれて来たばかりの姿で静かに立っている。左足から腹部そして胸から肩へと続く張り切った弧状のムーヴマンに、垂直な右脚と背後に自然に伸ばして布を持つ両腕、そして軽く左を向いて直立する頭部の静けさが呼応し、穏やかな律動感を生んでいる。人体各部のフォルムを、相互の対立と調和の関係のうちに綜合し、一つの秩序ある構造体に組み上げていくマイヨールの手法は、彫塑的というよりむしろ建築的である。

(出典: 国立西洋美術館名作選. 東京, 国立西洋美術館, 2006. cat. no. 146)

写真:アリスティード・マイヨール イル=ド=フランス