石化した森
- マックス・エルンスト
- 1891年-1976年
- 石化した森
- 1927年
油彩/カンヴァス 81 x 99.6 cm
右下に署名: max ernst
P.1965-0005
「森」はエルンストにとって「鳥」と並び最も重要な主題の一つで、生涯を通じて繰り返し描かれている。中でも1925年から28年にかけて制作された「森と太陽」のシリーズは、その中核ともいえるもので、当館所蔵作品もその連作の一つに位置づけられる。
欝蒼と茂る、荒涼とした森の背後に太陽が透けて見えるイメージは、しばしばドイツ・ロマン派の風景画と結びつけられてきた。確かに、神秘的な雰囲気は両者に共通するものがある。だが、エルンストにとって、森は単に得体の知れない不安を喚起するだけのものではない。むしろ相容れることのない両義的な感情を同時に引き起こすものであった。「歓喜と息苦しさ」「自由と囚われ」「期待と不安」など、エルンストが自ら語った森に関する文章は、こういった対照をなす言葉で綴られている。
この内面世界の神秘を探求するかのような作品を、エルンストは自ら案出した技法を駆使して描き出している。彼はそれをグラッタージュと名付けた。エルンストはケルン・ダダの時期(彼自身は1925年と主張)よりフロッタージュという技法を試みているが、これはさまざまな物に紙をあてて鉛筆などで摺り、その表面の質感を写し取るものである。これを油彩画に応用したのがグラッタージュで、カンヴァスに塗られた絵の具をパレットナイフで削りとることによって、その下にある物の質感を転写する。エルンストはこれらの技法を、文学における「自動筆記」に匹敵する、絵画におけるシュルレアリスム的手法として見出した。
(出典: 国立西洋美術館名作選. 東京, 国立西洋美術館, 2006. cat. no. 118)
