ブラン氏の肖像
- エドゥアール・マネ
- 1832年 - 1883年
- ブラン氏の肖像
- 1879年頃
油彩/カンヴァス 194.3 x 126 cm
P.1984-0002
この作品《ブラン氏の肖像》はマネの51歳の生涯の晩年に描かれた。1879年、脚を病んだマネは治療のため、パリ近郊のべルヴューに滞在していた。ここで著名なオペラ歌手のエミリー・アンブルと知り合った画家は、カルメンに扮した彼女の姿を描くとともに、ここにみられるその友人、アルマン・ブラン氏の肖像を手掛けたのである。山高帽を被り、裾の広がったズボンをはき、洒落者らしい気どったポーズで木蔭に立つモデルは裕福な新興ブルジョワ層に属する人物であろうか。自然主義の小説にでも登場するようなこういったタイプの人間を描くことにマネが「現代性」を見出していたのは疑いない。下塗りをせず、鮮やかな筆遣いで一気に賦彩するマネ独特の技法によって、画面はたった今描かれたような新鮮な輝きをおびている。
来歴に関していえば、この肖像は結局ブラン氏の手には渡らず、マネの歿後にドガが手に入れた。その後、初期の印象派のコレクターとして名高いデンマークのハンセン・コレクションにあったが、他の印象派の作品とともに松方幸次郎氏によって購入され、日本にもたらされた。
(出典: 国立西洋美術館名作選. 東京, 国立西洋美術館, 2006. cat. no. 67)
