坐る娘と兎
- ピエール・ボナール
- 1867年-1947年
- 坐る娘と兎
- 1891年
油彩/カンヴァス 96.5 x 43 cm
左上に署名(PとBがモノグラム)、年記: P Bonnard / 1891
P.1987-0001
19世紀後半、ヨーロッパの文化人・芸術家の間では「日本趣味(ジャポニスム)」がブームを呼び、浮世絵を主体とする日本の美術品はヨーロッパの先進的な画家たちに強い影響を与えた。ナビ派の中心的なメンバーであったボナールもその例外ではない。彼は当時、仲間たちから、ボナールにジャポンをかけて「ナビ・ジャポナール(日本かぶれのナビ)」という渾名で呼ばれるほど、日本美術に傾倒していた。事実、彼は広重、豊国、国貞、国芳などの浮世絵版画を多数所有し、「私は部屋の壁をこのような素朴なけばけばしい版画類でうめつくした」と語っているのである。ヨーロッパの伝統的な三次元的空間表現を拒否し、平らな画面と装飾的に意匠化された構図を志向していたボナールにとって、日本の版画は驚異の的であった。1891年に描かれたこの《坐る娘と兎》は、若きボナールの創作活動の中でも一つの頂点の時期に位置する作品である。ナビ派時代の彼の作品の特徴である装飾性がここにもはっきり現われているが、とりわけ著しく縦長の画面形式、S字形の曲線に支配された女性の姿態、装飾的モティーフと二次元的空間構成などは、日本美術の強い影響を示している。
(出典: 国立西洋美術館名作選. 東京, 国立西洋美術館, 2006. cat. no. 109)
