本文へ

当サイトでは、お客様の当サイトの利用の向上、アクセス履歴に基づく広告、本サイトの利用状況の把握等の目的で、クッキー(Cookie)、タグ等の技術を利用しています。「同意する」ボタンや当サイトをクリックすることで、上記の目的のためにクッキーを利用すること、また、皆様のデータを提携先や委託先と共有することに同意いただいたものとみなします
詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。

丘を下る羊の群

ジャン=オノレ・フラゴナール
1732年 - 1806年
丘を下る羊の群
1763-65年頃
油彩/カンヴァス 52 x 73 cm
P.2000-0001

詳細はこちらから

18世紀フランスを代表する画家の一人フラゴナールは、その軽快で華やかなロココ風の甘美な風俗画や装飾画によって名高いが、同時に、真撃な自然観察を通した爽やかな風景画も多く手がけていたことで知られる。
ここに掲げた作品もそうしたもののひとつで、フラゴナールが1761年から4年間のローマ留学を果たした際に見たイタリアの風景をもとに、当時流行し始めていたオランダ風景画の要素を巧みに取り入れた画面となっている。
雲間から漏れる精妙な光の効果はまさにロイスダールなど北方の風景画家たちの直接の影響を示すが、はるかに山を望む地形や動物、人物などの風俗的描写は画家がイタリアから学んだものであろう。画面の四分の三を占める雲の多い空を背景に、低くとった前景には牛や馬、あるいは羊の群れに添景人物を配している。また、その間の中景は小高い丘と大きな灌木をシルエットとして用い、それらを空にくっきりと浮き立たせている。
フラゴナールの後期作品においては、風景と特定の神話・風俗主題の融合がいっそう進み、新境地を開拓してゆくが、イタリアから戻って間もない時期に描かれたと思われるこの作品では、未だ純粋な風景画の要素が勝っていると言えるだろう。

(出典: 国立西洋美術館名作選. 東京, 国立西洋美術館, 2006. cat. no. 52)

写真:ジャン=オノレ・フラゴナール 丘を下る羊の群