過去の展覧会
ドレスデン版画素描館所蔵 ドイツ・ロマン主義の風景素描: ユリウス・シュノルの「風景画帳」、フリードリヒ、コッホ、オリヴィエなど
ドレスデン版画素描館所蔵 ドイツ・ロマン主義の風景素描: ユリウス・シュノルの「風景画帳」、フリードリヒ、コッホ、オリヴィエなど
- 会期
- 2003(平成15)年6月24日- 2003(平成15)年8月24日
- 会場
- 国立西洋美術館
- 主催
- 国立西洋美術館、ドレスデン版画素描館、財団法人西洋美術振興財団
- 出品点数
- 素描103点
- 入場者数
- 48,114人
- 関連書籍
- 展覧会カタログ
2003年発行、330頁、高さ30cm、カラー図版103点
この展覧会は、「風景画帳」と呼ばれるユリウス・シュノル・フォン・カロルスフェルト(1794−1872)の作品を中心に、ドイツ・ロマン主義の風景素描を紹介するものです。 シュノルは、ウィーンのアカデミーで美術を学んでいましたが、その形骸化した教育に不満を持っていました。そのため、すでにアカデミーを飛び出してローマで理想的な芸術を求めて共同生活をしていたドイツ人画家グループ「ナザレ派(“キリスト派”の意)」に合流します。シュノルは10年におよぶローマ滞在中、旅行先に素描道具を携帯し、自分が心引かれた風景を記録しました。風景画帳は、ドイツに帰国したシュノルが、イタリアでの風景素描から115点を選んだアルバムです。展覧会の第1部では、この風景画帳から59点を厳選し、シュノルの風景素描の本質に迫ります。
第2部では、シュノルと関係の深かったヨーゼフ・アントン・コッホ、カール・フィリップ・フォーア、フランツ・ホルニー、オリヴィエ兄弟、フリードリヒ・オーヴァーベック、アードリアン・ルートヴィヒ・リヒターなど、シュノルと交流したナザレ派の画家たちの素描を35点展示します。さらに、イタリアの明るい光の下で素描したナザレ派とは別の道を歩んだ、カスパー・ダーヴィット・フリードリヒの素描も9点出品されています。彼はナザレ派とは異なり、ドイツに留まることで、北方の風景描写を追求しました。
通常、フリードリヒとナザレ派の作風は相反する芸術としてとして捉えられるのですが、フリードリヒもアカデミーの美術教育に反対し、自然の写生を重視したことから、その素描にはナザレ派と共通する要素を見い出すことができます。 ロマン主義の本質は、絵画ではなく素描にあるのかもしれません。「ロマンティック」なものは、制作に時間をかける油彩画ではなく、素早い筆致によって表現する素描によってのみ捉えうるものなのかもしれないからです。彼らの残した素描は、準備素描というよりも、それ自体が完成された一つの作品のような魅力を持っています。本展覧会では、19世紀ドイツの素描を充分に楽しんで頂くとともに、素描が果たした芸術的役割、また素描家としての芸術家の在り方を見つめて頂けるに違いありません。